家族

余命宣告と希望

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今日入院中の父さんの見舞いに行ってきた。一日中横にいるつもりで。

 

着いてすぐ、暇だろうと思って先日購入したタブレットを渡した。

元気な頃はそういったハイテクな機器に拒否反応を示していたが、珍しく興味津々で俺の説明を聞いてた。

「お?落語も聴けるのかぁ。いいなぁ。」

こんな素直な言葉あんまり聞いたことがないから内心変な感じだったけど。笑

 

そんな感じで1時間位過ごした後、元々予定にあった担当の先生の話を聞きに母親と病室を出た。

ちなみに、母親はもうすでに何回か話を聞いている。

だけど「確信に触れることは怖くて聞けない」と前に言っていたから、俺が聞くつもりで面談室に入った。

 

まず言われたのは、

  • 手の施しようが無いということ
  • 治すどころか、もう今の状態を維持すら出来ないということ

でもそれは前に母親から聞いていた。

だから単刀直入に聞いてみた。

「あとどれくらいもちますか。」

少し言いづらそうに先生は言った。

「2〜3ヶ月ですかね…」

その瞬間母親が、制御の出来てない声量で「え!?」と言った。

(想像できてなかったんか…)

 

あとから聞いたんだが、「なんだかんだで1年位はもつ」と勝手に想像していたらしい。

それを聞いて、この数年間ずっと横で見てきたから感覚が麻痺しちゃったんだろうと思った。

だってお腹は人の何倍も広がってるのにその他の場所は皮しかないんだぜ?もつわけ無いやん…

 

その後は、治る可能性の無いことを遠回しにひたすら聞かされた。優しい先生だなって思ったよ。

 

でもその間も母親は

「この治療やればもう少し生きれるかもしれませんよね?ダメかもしれませんけど、ひょっとしたら延命できるかもしれませんよね?」

そんなことをばかり言いづらそう聞きづらそうにに先生に聞いていた。

 

それでも、どうにも信じれないようで今度は俺に言ってきた。

「ねえ?あんたもそう思わない?」

「もう無理だわ。」

俺はとっさにそう言ってしまった。

母親を気遣う余裕はなかった。

 

面談室から出て、余命を父さんに伝えるのか話した。

結果、「今はまだ言わないでおこう」ということになり、平静を装って病室に戻った。

 

開口一番、

「なんて言われた?」

そう聞かれた母親は、

「この前と同じ説明をこの子にしてただけ。」

必死に嘘をついてる母親を俺は後ろから見ていた。

「なんだ、また同じ説明か。なんか新しいこと言ってなかったのか」

父さんは少し苛立った様子で母親に聞いた。

「新しいことは何にも言ってなかったねえ。私たちに言ったことをこの子にまた説明して終わっちゃった。」

母親は大女優顔負けの演技をしていた。

ちょっとでも油断すると涙が出てくるだろう状況で凄いと思った。

愛なのか、なんなのか。

愛だろうな…

 

父さんも父さんで、いい話を期待していたんだろう。

イライラしているのが凄く伝わってきた。

口じゃ「もうだめだな」とかたまにこぼすらしいけど、やっぱり生きたいんだよな。じゃなきゃ苛つかないよな。

 

今日面談室にいく前に、父さんはこんなことを言っていた。

「爺さんが死んだ歳までは生きたかったけど無理だろうなぁ」

おじいさんが死んだのは76歳。父さんは今67。

父さん自身、恐らく2、3ヶ月で死ぬとは思っていない。

今思えばそんな口ぶりだった。

死の受容過程というものがあるけど、これってみんなこんな風になるんかな?

 

今日は1日中父さんの横にいるつもりで来たけど、ちょっとそんな状況じゃなくなってしまった。

「んじゃこの子とご飯食べて帰るね」

母親は父さんにそう言った。

俺がカーテンを開けて仕切りから出ようとした時、

「おい、コレありがとな。」

タブレットを指差して父さんが言った。

(「ありがとう」って初めて言われたな…)

そんなことを思いながら病室を出た。

 

実際のところ、2、3ヶ月で死ぬとかまだ現実味がない。

でもいつか来るその時に備えなきゃいけない。

俺長男なんだよね。

情けない姿を見せるわけにはいかないんだ。

 

 



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